加藤一成建築設計事務所

前面道路側の東面ファサード．屋上に昇る階段が玄関扉を斜めに切り取る．通学路を通る小学生にも大人気らしい．

何も描かれていない、無地のキャンバスのような住宅です。

秋田市郊外、小高い丘の途中に位置する鉄筋コンクリート造平屋建ての住宅です。
東側の道路に面する住宅正面に窓は無く、屋上に昇る階段がスチール製の玄関扉を斜めに切り取ります。

内部は、LDK・ROOM-1・ROOM-2の領域は定義されているものの、それぞれの室に間仕切りや建具は無く、細長い水回りを除いてはワンボックスの空間としています。

LDKの床・水回りの床・外部に面さない内壁・天井はコンクリート打ち放しとしており、ROOM-1とROOM-2は、コンクリートの床とフラットに、オーク無垢フローリングが敷かれています。

外部開口部は法規上の基準をクリアするギリギリの開口面積であり、採光の多くはトップライトから得ており、大きな窓の多い現代的住宅とは異なる独特の落ち着きと安心感が感じられます。

冷暖房は、除湿放射冷暖房のPSを採用しており、快適で見た目にも美しい室内空間を実現しています。

照明計画は、天井に直付けされた照明器具は無く、ブラケットやダクトレールによる主照明方式としています。ROOM-1・ROOM-2は壁際にアッパー照明を設け、内部の窓枠部にもライン状の照明を設置し、柔らかな間接照明の効果を生み出しています。

完成した住宅は「素」のキャンバスでしかなく、これから年月をかけ、クライアントによって様々に彩られていきます。

LDK．正面にオープンキッチン．左手は玄関扉、右手にROOM-1・ROOM-2の領域が位置づけられている．

ファサードの特徴となる、幅約1.8ｍのスチール製玄関扉．赤茶色の塗装は、鉄骨錆止め塗装　JIS K5621．

ホワイトのパネル、及びホワイトのフィン状の衝立がPS製の除湿放射冷暖房装置．快適で見た目にも美しい室内空間を実現する．ROOM-1・ROOM-2のコンクリート壁下部には、壁面を照らし出すアッパー照明が仕込まれている．

LDKからROOM-1・ROOM-2方向を見る．コンクリート床とオークフローリング床はフラットに納められている．開口面積は少ないが、効果的に光が入り込む．

キッチン前から玄関扉方向を見る．2ヵ所のトップライトとスリット状の窓から差し込む光．

唯一区画された空間の水回り．奥にシャワーと浴槽．

キッチンから水回り方向を見る．室内では1ヵ所だけのスチール戸．この家には扉は2枚しかない．

水回り奥から入口方向を見返す．トイレはフローティングタイプ．

南東から見る．スリット状の窓は、水回りとキッチンの窓．外部・内部の打ち放しは、無塗装の型枠が使用されており、狙い通りに多少荒さと味わいのある表情に仕上がった．打ち放し面の補修は、ほぼしていない．

外部から屋上に昇る階段．

屋上．手摺は1,600立ち上げられており、将来は屋上緑化やデッキなども予定されている．2～3km先に日本海が見える．

暮らし始めた内部空間．セレクトショップかカフェのような雰囲気が漂う．

一見雑多に見えるモノたちは、実は一つ一つとても拘りを持ってチョイスされている．